ATS TOKYO 2017

 

            

 

 

 

“ATS” は、過去12ヶ月の日本のプログラマティック・マーケティング、広告業界のトレンドと成長性と、日本と海外における将来的な市場発展にフォーカスしたイベントです。
業界を先導するテーマをもとに、国内外で最も注目されている企業、スピーカーを講演のステージに召還。海外のゲストや参加者に対しては日本企業とのネットワークやコネクションの構築の場を、また日本企業には他国で市場がどのように成長し発展したかについての洞察を得るための優れた海外事例を提供しています。
10月3日(火)に開催された、”ATS Tokyo 2017” ではExchangeWire編集長の野上智之氏をモデレータとし、PubMatic社カントリーマネージャーに就任したNicolas (Nick) Kovac氏と弊社代表取締役 櫻井 賢で「グローバル市場から考察したパブリッシャーが直面するプログラマティック広告における透明性の課題」をテーマにパネルディスカッションが行われました。

 

ディスカッション

於:ウエスティンホテル

2017年10月3日

パネル

グローバル市場から考察したパブリッシャーが直面するプログラマティック広告における透明性の課題。

野下氏:透明性にする議論は、バイサイドからの議論が多いと考えております。ここでは透明性という観点でグローバルではどうなっているか、パブリッシャーの観点でどうなっているか、透明性の議論をしてみたいと思います。

スピーカーは、皆さんご存知のおふたりかなと思っています。改めてご紹介するまでもないと思いますが、2014年のATS Tokyoにもおふたり一緒にご登壇いただいていて、3年ぶりのカムバックということになります。環境も変わられていますし、改めて自己紹介をお願いできればと思います。

 

Kovac氏:今日、このステージにカムバックして、取り上げるテーマは色々とあると思います。一つは、私は足が悪いのですが、今日は櫻井さんが私に合わせて足を怪我してきてくれました(笑)

私は、5、6年前、元々コンサルタントとしてOpenXの事業を当時サイバー・コミュニケーションズに在籍されていた櫻井さんと一緒にやっておりました。Amazonの関連企業である A9にも入社して、そちらのアドテクノロジーを紹介したり、Googleの手伝いもさせていただきました。そして、昨日発表にあったとおり、PubMaticの日本支社のカントリーマネージャーに就任いたしました。

 

野下氏:はい、次は櫻井さんお願いいたします。

 

櫻井:2014年にサイバー・コミュニケーションズから居なくなって、3年くらい公の場に出ていなかったので、「櫻井は死んだんじゃないか」という噂が流れていたらしいのですが、3年間、動画のPMPの市場を構築するため準備をしていました。昨年9月にクエスト・コミュニケーションズという会社を立ち上げ、やっと6月からサービスをスタートすることができたという状況です。そもそも、ニックさんとはGoogleさんが日本でアドエクスチェンジをやる前から、我々、ふたりでプログラマティックな環境を作ってきたと自負しております。これからも協力し合ってプログラマティックの市場を、私は動画の方が専門ですけれども拡大していきたいと思います。

 

 

野下氏:はい、どうもありがとうございます。

それではまず、透明性に関して、透明性という言葉は色々と広い概念ですけれども、まずは全体感を捉まえていきたいと思っております。まずはニックさんにお聞きしたいのですが、グローバルではこの透明性ということに関して、どのような議論がされているのでしょうか?



 

Kovac 氏:透明性の課題に関しては色んな観点があると思いますが、さきほど山縣さん(ユニリーバ)と新谷さん(The Trade Desk)がお話したように、デマンドサイドから見る透明性は、ビューアビリティや広告の詐欺の話などが中心になると思います。

一方、もひとつの観点は、パブリッ

ャーサイドからいう透明性ですね。我々

の方は、やはり、広告の質、枠の質ですね。ユーザエクスペリエンスを色々見ています。日本の場合、この5、6年にわたる私の経験では、広告の安全性が非常に大事だと思われています。もうひとつの透明性のテーマとしてあげるのはプライシングです。SSPやDSPがどういうプライシングをするかは、海外では話題となっています。例えば有名な英国の新聞会社がプライシングに関して、SSPさんと揉めて、訴訟を起こしたこともあります。

プログラマティック分野におけるこの話題は、世界中で広がっているのですが、PubMaticは「Let's Be Clear」というキャンペーンを始めて、このキャンペーンを通じて媒体やデマンドの議論を展開し始めています。グローバルで、今年の6月から開始しましたが、日本でも展開していこうと思っています。しかし、日本では、まだ安全な面についての関心が高い状況のため、「Let's be Clear」より「Let's be Safe」のほうが分かりやすいかもしれません。

野下氏:はい。非常に印象的なお言葉ですね。

櫻井さんは、いかがでしょうか?

 

櫻井:今、私どもは動画のPMPということで、インストリームに特化しているのですが、インストリームの動画の在庫ということでいえば、YouTubeさんやニコ動さんに次いで、おそらく日本で三番目くらいに在庫的な潜在能力があると思っています。

その昔、ニックさんとアドエクスチェンジを始めた頃、在庫の質というのが、すごく問題になっていて、当時競合がRightMediaさんだったのですが、大きな違いは、在庫の質でした。

 

RightMediaさんの強みは、我々がスタートしていたマーケットよりも安く買えるということでした。安ければ沢山買われるだろうということで、とにかく色々な在庫を集めなくてはならないという使命がありました。その中で、安く買えるイコールやはり在庫の質が悪いということで、米国の方ではだんだんとシュリンクしていき、日本もその余波をうけて、結局だめになりました。そこで、私がエクスチェンジ自体を日本で根付かせるためには、とにかく、質の良い在庫をアドエクスチェンジに入れていかなくてはならないと考えました。

しかし、SSPさんにしろエクスチェンジにしろ、とにかく在庫の量が多くないと勝負にならないということで、色々な有象無象のメディアを全部、私が審査していました。その審査ですけど、トップページはいいのですが段々下の階層にいくと、誹謗中傷やエロなど、そういうのがあったため、全部はじいていました。今時リターゲティング技術がすごくて、私のマシンにエロの広告などが朝から出るようになって結構嫌な思いをしていました。画面を隠す形で、社員に見られないようにとか、こそこそ審査していたりしました。(笑) 結局、何が言いたいかというと、透明性という点とか、安全性という点でいうとメディア自体がSSPさんとかエクスチェンジとかベンダーさん、プラットフォームさんとお付き合いする時に、周りにどのようなメディアが入っているかという点をきちんと確認して、その動画プレイヤー自体もIABの規格どおり、ビューアブルになっていない、インビューになってないと再生が止まっているかどうかとか、そういう点をできちんと質を担保した所に参加するということが、メディアさんにとっては重要ではないかと思います。我々もそうですし、広告主さんも広告代理店さんもプレミアムなメディアしか買いたくありません。在庫の量は必要ですが、そこの面の差別化という点で、メディアさんもベンダーさんとかプラットフォーマーさんを選ぶときの基準を、ちゃんと守っていくことが重要だと思っています。

 

野下氏:透明性や安全性の議論は、とても幅広いです。

グローバルと日本でも、議論になるポイントが違う所もあると聞きます。グローバルの状況を踏まえて、ニックさんは、パブリッシャーの観点で透明性や安全性について、何が今論点であるとお考えですか?

 

 

Kovac 氏:透明性について評価するためには、どこにコントロールがあるかどうかが非常に重要な点だと思います。

例えば、広告主の広告がどのような枠に、どのように表示されるかを管理することです。また、動画の広告がどのように再生するのか、どのようなユーザーエクスペリエンスがあるか。このコントロールに関しては非常に重要だと思っています。

もうひとつは手数料設定や、その配分に関してのコントロールが非常に重要だと思っています。

我々は英語で「Ad decisioning」という言葉を使います。日本語にすると『広告選定』という言葉なのですが、その決定権がどこにあるのか、媒体にあるのかどうかということ、つまり決定権を媒体に取り戻すことは非常に重要な活動だと思っています。

 

 

野下氏:ここに関して少しお聞きしたいのですが、その決定権を取り戻すときの具体的なアクションとして、このようなことをやったほうががいいなど、何か思われることはありますか。

 

Kovac 氏:決定権を媒体に取り戻す方法としてご紹介したいのは、オープンソースです。オープンソースを媒体の方に勧めています。Prebid.jsというオープンソースのヘッダービディングがありますが、これを紹介しています。オープンソースなら平等にオープンにどのようなビディングをしているのかが可視化できるため、非常に良いソリューションだと思っています。

 


 

野下氏:ありがとうございます。次に櫻井さんにお聞きします。櫻井さんはインストリーム動画が専門領域だと思いますが、そのような観点ですと、動画に絞った場合で、パブリッシャーさんがどのようなことに気をつけたほうが良いか、 もう少し詳しく掘り下げてください。

 

 

櫻井:今年の3月、某最大手インストリーム会社の件で、世界中で問題になった事件があったと思います。テロリストや反社会勢力の動画にインストリームで広告が出てしまい、

 

 

 

 

広告出稿費240億円がなくなったという話がありました。だいたい動画アーカイブサイトにある動画のコンテンツの前や後ろに出るのがインストリームだと思われがちなのですが、基本的に私の思うインストリームの概念は、コンテンツの前や後ろや真ん中に流れるもの全てをインストリームと考えています。インフィードやインリードと勘違いされやすいのですが、必ずコンテンツがあってその前に広告が出ます。我々のやり方としては、メディアさんがコンテンツを持っていない場合、コンテンツ自体を私たちが供給します。コンテンツ自体をきちんと担保されているものでないと、危険ではありませんか? というお話をしています。私の概念でいうと、プライベートマーケットプレイスというのは、広告主さんが出したい媒体を選べる、逆に媒体社さんからいうと広告主が安定した価格で買ってくれるという安心感がある、このようなことが普及してきているため、あまり心配な点はないと思っています。ところが、インストリームに関して今回のような事件があったので、「インストリームのコンテンツを皆さん気にしていますか? いいのですか?」と問題提起しています。更に去年の11月、某キュレーションメディアでbotの記事や素人が記事を書き換えたりして大問題になり、多くのキュレーションメディアが死んでいったと思います。このままであると、インストリームに関してもすごく緩く、同じ事が起こりえると思います。個人が撮影した全く信憑性もない動画に、インストリームの広告が流れているというのは、すごく危険なことだと思います。なぜならば、その動画が正しいものなのかどうかが何も証明されていないからです。インストリームという広告手法自体がIAB曰く、これから、かなり伸張していくと言われている中で、こういった部分にも神経を配らなければならないと思っています。また、我々みたいな業者がそのようなところに協力していくことにも力を注がなければならないと思っています。これをきちんとやっていかなければ、これから伸びようとしている動画広告市場がシュリンクしてしまうのが一番怖いため、そういった点はPubMaticさん含め色々なSSPさんやDSPさん、アドヴェリフィケーションの会社さんなどと協力しながら、きちんとした市場を作っていきたいと思っています。

 

野下氏:透明性に関する議論、業界課題は色々とパブリッシャーの観点からもあると思いますが、ニックさんはPubMaticさんに入られて、今の立場で今後そこの課題に対して、どのように取り組みたいと思いますか?

 

 

Kovac 氏:これから一番重要だと思っていることは、今のブラックボックスのふたを開けてホワイトボックスにしていくということです。また、ヘッダー入札の普及によって幅広いインプレションが平等に販売していける活動も重要だと思っています。

 

 

野下氏:ニックさんのところは櫻井さんのところのようなvideoのところも注力されているのですか?

 

Kovac 氏:そうですね。ビデオやモバイル、ネイティブが当社のフォーカスエリアです。媒体を育てながら、幅広く展開したいと思っています。

 

野下氏:櫻井さんはいかがでしょうか。今の立場でどのようなことに取り組んでいかれるとお考えですか。

 

 

櫻井:インストリームの広告はまだあまり普及されていません。大手広告主さんは市場の動画広告の出稿メインはYouTubeだと思うのですが、それ以外のところにはあまり出ていません。私はインストリームに関してはコンテンツ自体プロが作ったもの、もしくは、プロが監修したもの以外のコンテンツを広告の材料として使ってはいけないのではないかと考えています。私どもは完全にプロが監修したもの、もしくは、プロが作ったものしか使っていません。また、すべての動画を1本ずつ人間の目で確認しています。動画は3000本くらいあるのですが、すべてチェックしてCMSにあげるという作業をしています。そうすることによって、事前に広告主さん、代理店さんに動画を見せて、レポーティングの際に、どこのジャンルにインストリーム広告が出たかということをレポートします。さらに、去年もデータ改ざんなどで色々問題がありましたが、アドセーフであることや透明性という観点でいえば、やはり生ログデータをそのまま人の手を介さないで広告代理店さんや主さんに渡すところを、きちんと配備しなければならないという点に重要性を感じています。

 

 

野下氏:なにかフォーマットでもその辺りは考えていますか?

 

 

櫻井:基本的に基準になるのは、YouTubeさん、Googleさんが採用しているシステムで、完全視聴率やどこに出たかというところはレポーティングで調整できるので、いろいろカスタマイズできます

 

 

 

野下氏:透明性や安全性に関する議論は、パブリッシャーさん側のほうで最近非常に活発になってきたということをメディアを運営していて感じてはいるのですが、グローバルな流れが日本に入ってくるので、その辺の動きもとらえながらバイサイドの方の協力と理解を得ながら、お二人のような方々が連携して健全な業界のエコシステムを作っていければよろしいのではないかと感じています。最後におふたりから一言ずつあればお願いします。

 

 

櫻井:動画に関するところでいうと、

完全視聴率というところが軽視されて

いるのではないかと思っています。

おそらく、インリードやインフィード

はかなり完全視聴率が低いです。

しかし、インストリームは完全視聴率

がとても高く、平均で2~30%くらい

あると思います。

私たちは特にVPAID(※1)を推して

います。こちらは完全視聴率が非常に高く、4~50%は当たり前の様に透明性という意味では膨大なデータを収集できる良さもあります。時間がないので、聞いていただけるのであれば、詳しいことは個別にお話しさせてください。

 

 

Kovac 氏:これからの透明性の議論に関して、みなさんと色々お話しできることを楽しみにしています。

 

 

野下氏:以上になります。ありがとうございました。

 

(株)パレンテが2017年7月21日~8月20日に行ったWAVEブランド認知キャンペーンにおける

動画CMの各媒体広告タイプによる完全視聴率の結果

 

登壇者

Nicholas (Nick) Kovac(ニック・コバック)氏
パブマティック株式会社
カントリーマネージャー
Mr.Nick Kovac 日本市場におけるPubMatic社の成長や戦略的パートナーシップを構築するため、現職に2017年10月に就任。
それ以前の5年間は、cci社とのパートナーシップを構築し、OpenX Japanを設立、同社のマネージングディレクターとしてビジネス拡大の役割を果たした。
また、A9社(Amazonの関連会社)やGoogle社の新ソリューションのローンチに従事した経験を保有する。

 

 

 

野下 智之氏
ExchangeWire Japan 編集長
慶應義塾大学経済学部卒業。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2014年10月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価機関デジタルインファクトを設立し、プロジェクトディレクターに就任。

櫻井 賢
クエスト・コミュニケーションズ株式会社
代表取締役
㈱サイバー・コミュニケーションズ(CCI)立ち上げメンバー。Yahoo! Japanを
はじめ数々のポータルメディアの担当者として、日本で初めてネット広告メニューを開発。その後日本初のアドネットワークとアドエクスチェンジを構築し、多くのデジタル媒体に収益をもたらした。 特にプログラマティック領域では、社内外の啓蒙に努め、CCIの新しい屋台骨を築き上げる。現在クエスト・コミュニケーションズ株式会社の代表を務め、インストリームに特化した動画PMPのサービスを展開し、透明性の高いブランドセイフな動画市場の発展に努めている。

VPAID事例

※1 QSTO VPAID : VPAIDとはVideo Player Ad Interface Definitionの略。IABが規定した動画プレイヤーとリッチメディア広告の間の双方向通信を可能にする業界の標準規格。VASTだけでは実現できない、ソーシャルメディアとの連携、再生する動画の選択などインタラクティブな広告を実現するためのAPI規格。欧米ではほとんどの広告代理店が動画広告に関して、その表現性の豊かさや大量のデータ取得を理由にVPAIDを推奨している。